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THIS IS ENGLAND~傷だらけの坊主~

2012.01.16 Mon


不況、人種差別、スキンヘッズ・・・


時は1983年、第二次大戦で国力を消耗したイギリスは慢性的な不況に見舞われ、政治・経済・社会制度、あらゆる面でボロボロであった。

多くの領土や植民地を失い、かつての「世界帝国」としての栄光は地に落ち「英国病」に悩まされていた。

前年、「鉄の女」サッチャー率いる保守党政権の下勃発した「フォークランド紛争」で父親を亡くした「いじめられっこ」の少年、ショーンは学校の帰り道、街のごろつき達と遭遇、ごろつきのリーダー格であるウディの優しさに心を開き、頭を剃って仲間になった・・・




僕は、節操無く色々な記事を書いているのだが、中でも「スキンヘッズのファッション」について書いた記事が何故だか一番読まれているくさい。

僕自身はスキンヘッズでも無ければ、「Oi!」が好きな訳でもないし、ジャマイカ音楽もそれほど知らないのだが、イギリスのユースカルチャーを語る上で避けて通れない「スキンズ」に都度、言及してきた。

ということで、今回は満を持して

THIS IS ENGLAND

this-is-england.jpg

THIS IS ENGLAND 【DVD】
価格:3,761円(税込、送料別)


監督である、シェーン・メドウズの実体験を元に、サッチャー政権下にあった1983年のイギリスの労働者階級の社会をスキンヘッズの若者達を通して綴ったドラマ。

ここに登場するスキンズはモッズから派生した第一世代では無く、慢性的な社会不安と台頭するナショナリズムに巻き込まれ、人種差別主義者のレッテルを貼られてしまった第二世代のスキンヘッズである。

「トレインスポッティング」以来、最高の青春映画などと書かれたりもしていたが、単純にユースカルチャーを切り取った若者の青春群像劇といった作品ではなく、映画としての娯楽性を廃し、当時イギリスが患っていた幾つかの重いテーマを背景とした社会派ドラマである。

「Toots and the Maytals」のアーリーレゲエにのって始まるオープニングの「目の粗い当時の記録映像」が時代背景を規定している



主人公こそスキンヘッドになった孤独な少年ショーンではあるが、重いテーマの担い手はストーリーの途中から登場するコンボという男。

リーダー格であったウディの兄貴分、何らかの罪で刑期を終えて出所してきた「69年から頭を丸めている」生粋のスキンズ・・・

彼と主人公の少年ショーン以外の登場人物のパーソナリティは希薄で味気ない印象だった。

domakethemlikethey2.jpg
ムショから帰ってきたコンボ
おでこに十字架のタトゥーがあるのが「本物」の証

tumblr_l9a2uwtYsr1qa94qh.jpg
リーダー格の青年ウディ
この映画でのファッションリーダー
黒のMA-1にチェックのボタンダウンシャツをトップまで閉め、ロールアップしたデニムに白ソックス、ドクターマーチンの8ホールブーツと典型的なスキンズファッションをスタイリッシュに着こなす。



英国の闇~国粋主義~

コンボが担った重いテーマとは「人種差別」、彼はナショナルフロント(イギリス国民戦線)に心酔していた。

ナショナルフロント(NF)は長引く不況とともに台頭してきた過激なレイシスト集団で、社会不安の元凶を移民である有色人(特にパキスタン人)に向けていた。そしてNFが有色人排斥の実行部隊として目をつけたのが「スキンヘッズ」だった。

当時、イギリスの失業率は10%を越え、街には300万人もの失業者が溢れていた。
まともに仕事にありつけず、抜け出せないフラストレーションの中で労働者階級の若者達は荒み、一部の若者は凶暴なスキンヘッズと化し反体制を叫びだす・・・

彼らの「盲目的反抗心」はNFにとって格好の餌であった。
サッカー場やOiパンクのギグに足を運んでは勧誘活動を行い「おまえらが仕事にありつけないのは有色人のせいだ」と吹き込まれた一部のスキンヘッズは怒りの矛先を有色人に向ける事となった。

有色人といえども黒人は例外で、黒人の生み出すクールな音楽はイギリスの若者の憧れであり、同じ環境で暮らしているジャマイカ移民の不良達(ルードボーイ)のスタイルや彼らの生み出す音楽「スカ、ロックステディ、レゲエ」は特にスキンズ達のお気に入りだった。

スキンヘッズは世界中に拡散しており(特にロシアは危険と聞く)、反社会的、差別主義の象徴として忌み嫌われている。
skinheads.jpg
ロシアのスキンズ
日本では「坊主頭」は健全な野球少年のトレードマークであったりするのだが・・・

仲間の溜まり場に突然現れたムショ帰りのコンボは黒人青年がいる中、差別的な発言を繰り返す。

リーダー格のウディは仲間の黒人青年をかばう事も無く、ただ黙っているだけだった。

その後のシーン、本人の前では強く言えないウディがコンボに対する不満を仲間達に話す様子から、コンボの存在が仲間内に不協和音をもたらすであろう事は明白であった。

そして、コンボは仲間に集合をかけ「ナショナルフロントの集会への参加」の勧誘を行う。

いよいよ溜まりかねたウディは不信感を露にしてグループは二分されてしまう。


世間一般的に「スキンヘッズ=極右、人種差別主義者」だと思われているが、それが全てでない事をここで明示していると言える。
Skinheads_Against_Racial_Prejudice_1.jpg
SHARP(Skinheads Against Racial Prejudice)の様な反人種差別主義の団体も存在する


グループの中でも無垢で感化されやすい少年達は「街に300万人もの労働者がいるのに移民達は優遇され、のうのうと店を構えている」等のコンボの話に感化され、NFの集会へ参加する。その中には主人公の少年ショーンも含まれていた。



ヒューマンドラマとしての側面

上でも書いたが、パーソナリティが希薄な登場人物が多い為、この部分を担えるのは主人公ショーンとコンボしか居ない。

とりわけコンボはロマンチックなキャラクターであった。

ムショ帰りのレイシスト・・・

それが彼の本質なのだろうか・・・

「俺をかばってムショに入ってくれた」的な事を言っている裏でウディはコンボの陰口を叩く

「尊敬されない兄貴分」コンボ

おそらく刑務所に入ったのも原因の多くは自分にあったのであろう

話が進むに連れ、その不器用さは浮き彫りになって行く

コンボは恋をしていた・・・

相手はウディの恋人、ロル
lol.png
濃いアイメイクの他はシンプル。典型的なスキンズ女子メイクのロル


ウディが自分の事を嫌っている事も、それをロルも間近で見ている事も、何より彼女が自分を嫌っていることも承知の上、それでもコンボはロルに告白してしまう・・・

「ムショに入る前、一緒に過ごした一夜が忘れられない、ムショにいる間もロルの事をずっと想っていた」

結果は当然・・・

思っていた以上に無残な形でコンボの恋は散った。

強面で、たいそうな主義をみんなの前で言い放ってみても、不器用な恋しか出来ない情けない男

去ってゆくロルを見送りながら彼は独り、車の中で泣いていた・・・


コンボは自分が不器用であることを自覚している。
「戦争、不況、爆発しそうな社会不安」の中、満たされない虚栄心は閉塞感とともに増幅し、暴力という稚拙な表現でしか解消できないコンボにとって、それを正当化してくれるのがナショナルフロントだったのだと思う。

コンボの空回りは映画のクライマックスまで続く


仲間内には黒人の青年ミルキーが居た

彼は温厚なキャラクタ?(なのか、気が小さいのかわからないが)で、コンボの様なレイシストの前でも大人しくしていたが、二人の関係にはなんとも言えぬ緊張感が漂っていたのも確かだった。

ふられた女ロルに媚を売ろうという意図があったのか、「差別発言」を取り繕うとすべく、コンボは黒人青年ミルキーに近づく

一瞬気が緩んだミルキーは、「幸せな自分の家庭」をコンボに話す

沸々と湧き上がる嫉妬と卑しく歪んだ感情に、ネガティブスイッチが入ってしまったコンボはつい口走ってしまう

「黒んぼのくせに・・・」

一瞬にして凍りついた空気の中「やっぱりコイツはダメだ」と言わんばかりに黙って苦笑いするミルキーに、コンボの卑屈なエネルギーは頂点に達し、遂には無抵抗な彼を半殺しにしてしまう。

繰り返してしまう不器用で稚拙な振る舞いに急激な自己嫌悪に襲われたコンボは、叫びながら泣き崩れてしまう。

「こんなはずじゃなかったんだ、こんなことするつもりなかったんだ」


現場には少年ショーンも居た。

自分に優しく理解を示してくれていたコンボに対する尊敬の念が一瞬にして不信感に変わる


そんな反面教師なコンボを見て少年ショーンは「大人の階段」を上った


この映画と日本

やはりこの映画は青春映画としてはテーマが重過ぎる、イギリスに横たわる最もシビアな問題である労働者階級と移民の問題を、スキンヘッズという存在を通してネガティヴに表現した社会派ドラマであったが、現在の日本の状況と無関係では無い印象も受けた。

弱体化する経済力、蔓延する不況の中、地に足の着かない政治は次々とリーダーを挿げ替える現在の日本。

労働意欲は低下し、若者の目は死にはじめ、「負け組」「勝ち組」というキーワードは貧富の差が生み出す格差社会を示唆している。韓流ブームに見え隠れするナショナリズムもそれと無関係では無いと思う。

アジアの勝ち組としてならして来た日本もやがてイギリスの様になって行くのだろう・・・


遠い島国の出来事ではない~フォークランド紛争~

主人公のショーンは孤独で塞ぎ込んだ寂しげなキャラクターとして登場するが、少年の心に影を落としているのがフォークランド紛争で戦死した父親への想い。

フォークランド紛争は1982年、アルゼンチンとイギリスの間に勃発した領土争い。

当時、内政的にボロボロだったアルゼンチン政府が国民の不満をそらす為に吹っかけた喧嘩で、紛争(戦争?)になるまで発展したが、当時のアルゼンチン政府は評判が悪かったので誰もアルゼンチンには肩入れせず長期化することは無く、イギリスの勝利で終わった。

勝利におわった事で不人気だったサッチャー政権の支持率は上がり、経済も復興に向かったみたいなので特に大きな問題として挙がって来なかったが、ここでもしイギリスが負けていたとしたら、この映画の主題は変わって来たかも知れない。

日本人にとってはそれほど馴染みのある戦争ではないが、北方領土や尖閣諸島など、島国として同様の問題を抱えている日本にとって、決して他人事では無い。領土問題がこじれると場合によっては戦争に発展する可能性がある事を今一度考えさせられる。

ファッションに関して

以前、スキンズのファッションについて、このブログで紹介したがスキンズは独特のファッションをもっており(モッズを継承している)、この映画でもドクターマーチンやベンシャーマンが具体名で登場するが、フレッドペリーを含め、毒タマもべしゃまも積極的にはタイアップしなかった様に思える。
やはりスキンズブランドと認識されるのに抵抗があったと見るべきか、特に理由は無かったのかは判らない。

そんな中で割りと積極的なタイアップをしていたのが「LONSDALE」、世界のスキンズブランドとして自覚しているかのごとく
14692042.jpg
lonsdale.jpg
ロンズデールはモハメドアリのスポンサーをやってた事もあるボクシングブランド
スキンヘッズはこのロゴ入りのTシャツとかを好んで着ていたくさい。
ポールウェラーも着ていたのでその影響でモッズブランドとして認識されているが、最近は日本でもボクサーのスポンサーについていたりして、俄かにヤンキーブランド色が強まっている

mylons.jpg
うちにあるロンズデールのジャケット
以前はこんな洒落たアイテムを出してたりもしたが
lonsdale-5.jpg
昨年位から、日本企画かも知れないがこんな様な品の無いアイテムのリリースが目立つ


続編がある

「THIS IS ENGLAND」には続編があって、「THIS IS ENGLAND 86」 と「THIS IS ENGLAND 88」がイギリスのチャンネル4という所でTVドラマ化されている。


THIS IS ENGLAND 86


THIS IS ENGLAND 88


登場人物のその後を描いた作品。

こちらは、それぞれのパーソナリティも見える青春ヒューマンドラマになっている模様。

日本では恐らく放送していないと思うが、興味のある方はどうぞ~

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Theme:映画感想 | Genre:映画 |
Category:グルーヴィ洋画譚! | Comment(4) | Trackback(0) | top↑ |
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no subject

http://www.moderntimes-co.net/SHOP/m1877.html
http://www.moderntimes-co.net/SHOP/m2014.html

某掲示板の過去ログでは、似非テンズの代表的ブランドとされるザズーとUNOのCMにモッズスーツを提供した噂のあるオアグロもコラボT出してたっぽいです。
- | テンズ | URL | 2012.01.19(Thu) 15:30:26 | [EDIT] | top↑ |

no subject

それは知りませんでした~。

どちらも日本のブランドですね(笑)

僕はザズーとかクールスキャットとか日本のブランドも好きなんで、そのうち「日本のズーテンブランド」に絞った記事も書いてみようかと思います~
- | ろな | URL | 2012.01.19(Thu) 17:20:01 | [EDIT] | top↑ |

no subject

ザズー好きだったんですね。
僕も好きで何着か持ってるので嬉しいです。

今までにブログでクールスキャット以外の国産テンズブランドには全く触れられていなかったので、国産はあんまり好きではないと勘違いしておりました・・・

日本のズーテンブランドの記事楽しみにしてますよ。泣きながら・・・
- | テンズ | URL | 2012.01.19(Thu) 19:36:11 | [EDIT] | top↑ |

no subject

日本のブランドはちゃんとしたもの作るので、むしろ好きなんですが、リリースが少ないのとバリエーションが少ないので、中々機会が無いですね~。
でも、幾つかズーテン度高い国産のブツ持っているので、木工の次に取り上げたいと思います~
- | ろな | URL | 2012.01.19(Thu) 20:51:09 | [EDIT] | top↑ |

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