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キャンディーズの音楽~中期のキャンディーズ録音編 最終回~

2012.12.07 Fri
ちょうど半年程前の事、いつもの店での出来事。

その日は、知り合いの誕生祝いをやるということで数名の知人が店に集まっていた。

誕生日を迎えるのは、ヒールの高い靴とベルボトムをこよなく愛する風変わりな男

彼は、昭和40年代サウンドに造詣が深く、店ではグルーヴィなドメスティックサウンドを引っさげて、しばしば熱いDJプレイを聴かせていたが、30代前半だというのに中二の頃からキャンディーズの大ファンだったという、特殊な中二病患者だった。

「誕生日だから、俺の好きなものをかける」といって取り出したキャンディーズのアルバム

針を落とした円盤から流れ出たグルーヴに僕は意表をつかれた

「え?キャンディーズってこんななの?」

この瞬間から、僕のキャンディーズ研究の日々が始まったのだ・・・


タゲマアイコン他のキャンディーズ記事はこちら

キャンディーズ~ラジオの世界 エグレと年増とドラム缶の美学~
キャンディーズの音楽~レコードデビュー未満~
キャンディーズの音楽~初期のキャンディーズ~
キャンディーズの音楽~中期のキャンディーズ録音編その①~
キャンディーズの音楽~中期のキャンディーズ録音編その②~
キャンディーズの1975年
キャンディーズの音楽~中期のキャンディーズ録音編その③~
キャンディーズのライブパフォーマンス~75年まで~
キャンディーズのライブパフォーマンス~大里マネージャのステージ美学とMMP~
キャンディーズのライブパフォーマンス~キャンディーズのスティーヴィワンダー~

~最も洗練された異色作 ニューミュージック・オブ・キャンディーズ~

02_15_21.jpg
「春一番」の次の作品である本作は「夏が来た!」という安直なタイトルがつけられている
が、内容は前作とはうってかわりアイドル色薄め、明らかに他のアルバムとは雰囲気が違うサウンドに驚かされる。
キャンディーズをヒット曲でしか知らない人が聴くと肩透かしを食うこと間違いない作品だ。

タゲマアイコン度肝を抜くグルーヴィーキャンディーズソウル

A1から、クラブ対応可能な「HELLO! CANDIES」、まるでMFSBやLove Unlimited Orchestraの様なガチなフィリーファンクで度肝を抜く。

ソウル・トレインのテーマTSOP(The Sound Of Philadelphia) /MFSB
http://www.youtube.com/watch?v=NEc8UWKC5us
Love´s Theme - Love Unlimited Orquestra (Original Version)
http://www.youtube.com/watch?v=zXm9SqhStqk
VAN McCOY - the hustle (1975)
http://www.youtube.com/watch?v=wj23_nDFSfE

上記に代表されるゴージャスディスコソウルサウンドの空気感たっぷりで、キャンディーズは例によってスリーディグリースマナーのコーラスを聴かせてくれます。そんでもって出番は少なめ(笑)

キャンディーズ HELLO!CANDIES
http://www.youtube.com/watch?v=l_u--Y6I59Q
残念な事にこの曲をキャンディーズがライブで歌っているのは確認出来ていない。ライブではMMPがインストでプレイしていた。その間キャンディーズは着替え中かな~

続く「危険な関係」もギュルギュルのシンセサウンドで始まるディスコ歌謡。アルバム「その気にさせないで」で穂口先生が手掛けたディスコソウルに趣きが近いが、宮本光雄という方の作、編曲は船山基紀氏(HELLO!CANDIESのアレンジもこの人)で、穂口組は絡んでいない。演奏もシンセのサウンドメイクも全然違う~。

そういえばシンセサウンドに関して一度も触れてこなかったのでちょっと触れてみよう。
ファーストの段階からシンセは使われていたのだが、穂口先生のシンセの音作りはシンプルで単純なノコギリ波系の音が多かったので、今回の船山先生の音作りは新鮮だ。
詳細な使用機材の情報等ないので、正確なところは判らないが、ミニムーグやアープオデッセイではなくて国産のシンセを使っているのではないかと想像している。
国産のシンセが登場したのは73年のことで、ローランドのSH-1000とコルグのminiKorg700であったが、多分、miniKorg700じゃないかと・・・
minikorg700s.jpg
コルグのminiKorg700 名前からしてミニムーグを意識している
1オシレーターのシンプルなアナログシンセであるが翌年には2オシレータのminiKorg700Sというのが出るので、セカンド以降のシンセはminiKorg700Sである可能性が高い。
ステージではチャッピーがシンセも使っていて、はっきりと見える映像が見つからないがムーグやアープっぽいのは無かったくさい。
明らかな鍵盤楽器はクラビネットとアープのソリーナ(ストリングシンセ)かな。
ちなみにエレピに関してはフェンダーローズのみでウーリッツァーは使用されてない模様。

タゲマアイコン穂口先生離脱

A3の「夏が来た!」に到ってようやくキャンディーズらしいサウンドが聴ける。このアルバムでは逆に浮いて聴こえてしまうが・・・
「春一番」に次ぐ穂口先生作詞作曲によるナンバーで、先行シングルとして発売され、「春一番効果」もあってかオリコン5位のヒットを記録する。
穂口ナンバーらしい、爽やかなフォーキーポップで、詞曲共に素晴らしい楽曲。
バックの面子も明らかに穂口組、歪んだ水谷ギターオブリガードを聴くとなんだか安心する。
しかし、このアルバムで穂口曲はこの曲と、水谷ギターリフがまた強いフォーキーロックナンバー、B2「ゆきずりの二人」のみ。

なぜなら、穂口先生はキャンディーズプロジェクトを離れてしまったからだ。
離れることとなった原因は「キャンディーズプロジェクト」が商業主義に傾いたからと言われている。
もともと「夏が来た!」はキャンディーズ用に作った楽曲ではなかったが、不本意にもシングルとして使われてしまったようだ。
「たかがアイドルの制作」と割り切っていない穂口先生の「若さ」と「熱さ」、そしてキャンディーズの存在感に驚かされるが、結果を出し始めたプロジェクトに対して会社や会議室がうるさくなってくるのも当然なことである。
そして穂口先生は今でも「熱い男」なのだ。
前回、「春一番」がカラオケで歌えなくなっている話をしたが「夏が来た!」も詞曲共に穂口作品なので、こちらもJASRAC管理から個人管理になった為、カラオケで歌えない事になる。

キャンディーズ「春一番」がカラオケから抹殺されていた
http://www.excite.co.jp/News/entertainment_g/20121113/Asagei_9137.html
前回も話したがこの問題は非常に重要なので、また別記事で取り上げることとします~。

穂口雄右がキャンディーズに戻って来るのは暫く先の事になる

さて、話をアルバムへ戻すとして、ここからが本当にこのアルバムの特色。

タゲマアイコンぶっ飛びの洗練力 キャンディーズニューミュージック

A4「MY LOVE」というA&M調AORナンバーが登場する。歌うのはスー
作曲は、この手の作曲が得意な丹羽応樹というシンガーソングライターの女性(作詞は竜真知子)でアレンジは船山基紀。
マイケルフランクスやニックデカロを手掛けたトミーリピューマばりの超ソフィスティケイテッドなサウンドは完全にニューミュージックだ。
なんとスーはここでアンニュイボーカルを披露する。前作でミキが歌ったラウンジチューン「朝のひとりごと」が布石となっているのは間違いないであろう。

Michael Franks - I Don't Know Why I'm So Happy I'm Sad
http://www.youtube.com/watch?v=2KL_rYttA5o
Nick DeCaro - Under the Jamaican Moon
http://www.youtube.com/watch?v=l86G34G6Mwk
「アントニオの唄」で日本でも人気が高いマイケルフランクスにまさにそのままキリンジなニックデカロ
トミーリピューマの洗練っぷりは半端ない~。ラジオで「マイケルフランクスが・・・」とミキが言っていた記憶があるので、この辺を参考にしている可能性は高い。

MY LOVE ボーカル:SUE 作詞:竜真知子、作曲:丹羽応樹、編曲:船山基紀
http://www.youtube.com/watch?v=eQqCRr-Y77g
こんな楽曲を歌うスーは後にも先にもこれ一曲、そしてこの歌に対する姿勢。決してベストなアンニュイ表現とはいかないまでも、ソロボーカルに対しての意識が明らかに高まっているのがわかる。

再び度肝を抜かれたスーの「MY LOVE」に続くA5の「さよならバイバイ」にまたしても驚きがまっていた・・・

デビューしたてのムーンライダーズ(このころは鈴木慶一とムーンライダース)が絡んできた~

ムーンライダーズは巧者揃いでアイドル関連の仕事も数多くこなしているのだが、当時はバンド活動の資金集めにこの手の仕事を始めたらしい(という口実で単にアイドル歌手に会いたかっただけかもしんない)。アグネスチャンとはバックバンドとしてツアーを回ったりもしていた。

ムーンライダーズが提供した曲は4曲、演奏もやっている。

「さよならバイバイ」は三人のソロパートと三声コーラスが聴ける椎名和夫作詞作曲のツンデレポップであるが、
椎名さんが単にキャンディーズ好きだったのか、そういう作風で作れと言われた為なのか、詞の内容やサビのメロディからみてもキャンディーズをイメージした作風になっている様な・・・

椎名作詞作曲ナンバーは4曲中2曲

さよならバイバイ キャンディーズ 作詞・作曲:椎名和夫、編曲:鈴木慶一とムーンライダース
http://www.youtube.com/watch?gl=JP&hl=ja&v=VI0UTc98feg
編曲も演奏もムーンライダーズがやっていて、キャンディーズの三人も各々ソロパートがあり、まさにキャンディーズ・ミーツ・ムーンライダーズとなっている。しかし、三人の歌唱がイマイチな・・・

季節のスケッチ ソロ:MIKI 作詞・作曲:椎名和夫、編曲:船山基紀
http://www.youtube.com/watch?v=MLxC4FC4s4E
B3に収録されている楽曲。こちらの編曲は船山基紀。チェンバロによる印象的なイントロもさることながら、グリッサンドを効果的に使ったアレンジが素晴らしい。イントロ/Aメロではギターバッキングにグリッサンドを使い、サビではホーンセクションが取って代わりグリッサンドしている。まさに「グリッサンドナンバー」
歌うのはミキ。しかし歌唱はイマイチかな、明るいシャッフル曲はミキには向いていない。どちらかというとこの手はスーのイメージ。ミキ以外の二人も参加している模様だがコーラスの主役もミキ。絶妙なアレンジが聴きものの楽曲であるが、歌唱としては後半に登場するランのスキャットが見事

他二曲は鍵盤の岡田徹作品(作詞は堤けい)。
B4とB5であるが、どちらも楽曲的には出色の出来

MOON DROPS ソロ:RAN 作詞:堤けい、作曲:岡田徹、編曲:鈴木慶一とムーンライダース
http://www.youtube.com/watch?v=Ua32Y-7FFqg
「さよならバイバイ」続き、編曲、演奏ムーンライダーズ。メンズのコーラスも聞こえるのでそちらもムーンライダーズだろう。
歌うのはランであるが、まだこの時点ではハードルが高すぎたか・・・
この手の垢抜けたチューンの経験が無い為か、歌い方が良くわかっていない模様。アンニュイ唱法とは言えない単調なノンビブラートに終始している。唯一の救いはエンディングのフェイドアウトで聴けるフェイク、やっぱり色っぽい。ランのアンニュイ歌唱法が解禁されるのは次作になるが、それがもう・・・

雨の日に偶然 ソロ:MIKI 作詞:堤けい、作曲:岡田徹、編曲:船山基紀
http://www.youtube.com/watch?v=x5jDQyyA3Rg
キャンディーズに向いているかどうかは別として、この曲はキャンディーズに提供された楽曲の中ではトップクラスの楽曲であるといえる。こちらの編曲はまたしても船山基紀で、ブライアンウィルソンばりの完璧な編曲を施す。演奏も恐らくムーンライダーズでコーラスはキャンディーズとムーンライダーズ混合であろう。
ここで歌うのはミキ。そんでもってまたミキが新たな挑戦に出た~。前作のラウンジナンバーでアンニュイ唱法とまではいかずもアンニュイ表現に挑戦してみせたが、この曲でアンニュイ唱法を披露。
完全に荒井由美を意識したであろうヘタウマ唱法はかなり特異で、鼻につく「ミキ節」も封印し淡々とノンビブラートで歌ってみせる。
A4でのスー同様、この様な歌い方をするミキも後にも先にもこの曲一曲のみである。




とりあえず、上記で触れなかった曲に触れてみると、またレアな楽曲がある。
穂口組でキャンディーズの録音には欠かせない名ギタリスト、水谷公生ナンバーが登場。
A面ラストを飾る、「めぐり逢えて」という曲だ。
強めのピッキングと強暴に歪んだ肉食系サウンドでキャンディーズをバックアップする水谷さんであるが、この楽曲はしっとりとした美しい楽曲で、歌うのはまたしてもミキ。
ミキはハイトーンなハスキーボイスを活かしたウィスパー唱法を披露。

めぐり逢えて ソロ:MIKI 作詞:たきのえいじ、作曲:水谷公生、編曲:渋井博
http://www.youtube.com/watch?v=N6YgG8_6GBk
ミキによると、この曲の録音の時にスタジオに飛んでいた虫が口に入って、そのまま胃袋の彼方へ消えていったとか・・・
聴き所はなんといってもコーラス。コーラスには他の二人も参加しており、なんとも美しいロングトーンを聴かせてくれる。ミキに寄り添うように爪弾かれる水谷さんのアコギも強暴なエレキの印象と妙なギャップがあって心が震える。

キャンディーズにおける水谷ナンバーは後にも先にもこの曲のみだ

もう一曲はラストナンバーである「恋はサーフィンに乗って」という井上忠夫ナンバー
「夏が来た!」というタイトルだからという理由だけで作った様なベタベタなサーフ歌謡であるが、楽曲の良し悪し以前に明らかにアルバムの空気を読めてない楽曲。制作サイドの諸々な事情により井上忠夫さんに楽曲を依頼したのだろうが、ボツる訳にもいかず仕方なく最後に入れたのだろう

恋はサーフィンに乗って キャンディーズ 作詞:東海林良、作曲:井上忠夫、編曲:竜崎孝路
http://www.youtube.com/watch?v=Jh8EM3UmR_M
ここで歌うのもやっぱりミキ~
桑田圭祐の「そんなヒロシに騙され」のネタになったとかならなかったとか・・・

あ、B1の「SAMBA NATSU SAMBA」をわすれていた・・・。
「夏が来た!」とシングル争いをしたと言われる曲であるが、あんまり好きな曲ではなかったので忘れてしまっていた~。
底抜けに明るいこの曲はキャンディーズのよる打楽器や「ガヤ」が収録されている珍しい曲。
タイトルに「サンバ」とついているので「おっ」と思うがサンバというよりもニューオーリンズ辺りの連中がやりそうなカリビアンテイストに近い中南米ナンバー。この曲だけ作詞が森雪之丞。
キャンディーズ SAMBA NATSU SAMBA
https://www.youtube.com/watch?v=e11Vk6NMrPM

このアルバムでは兎に角、ミキの出番が多い。他二人のソロが1曲ずつだったのに対しミキは実に4曲も歌っている。以前からその様な流れがみえていたが、やはり「録音でのセンターはミキ」と言っていいだろう。

タゲマアイコンキャンディーズ ネクストステージ

この作品での重要なポイントは当然、制作にある。
昔ながらの歌謡曲チームでもGS世代の作家チームでもないニューミュージックサイドの人脈が制作に携わったことだ。
洋楽のテイストを取り入れながらもドメスティックな匂いを失わないサウンドがキャンディーズの魅力であり、草食系ニューミュージック路線の制作との相性はそれほど良くない。
その手の制作と抜群に相性が良かったのは松本隆・筒美京平組が手掛けていた太田裕美だ。

この作品をキャンディーズの中でベストにあげるファンが多数いる事も知っているが、どうしても制作の方に耳が行ってしまい、キャンディーズがサウンドに追いつけていない感も否めない。

しかし、この初体験の中でキャンディーズは着実に次のステージへと向かった。

それぞれの表現、ソロボーカルの洗練だ

歌謡曲スタッフのもとに生まれ、GS世代の兄貴達に育てられたキャンディーズは春一番とともに女子の魅力を爆発させ、そして夏が来て大人への階段を上り始めた。



ということで当初の予定では日比谷野音での解散宣言までを中期する予定でしたが、録音的にはこの辺が区切りがいいので「キャンディーズの音楽~中期のキャンディーズ録音編」はこれまでとします~。

思いの外長くなってしまった~

Theme:お気に入り&好きな音楽 | Genre:音楽 |
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キャンディーズの音楽~中期のキャンディーズ録音編その③~

2012.12.05 Wed
おつ~、蟹工船から解放されるも、溜まりに溜まった記事の執筆から、MEGスタジオの作業まで、寝ている時間以外はずっと作業な感時じのロナです~

今回でなんとか中期を終わりにしたいと思います。

このあとも色々書かないといけない事が目白押しだ~

タゲマアイコン他のキャンディーズ記事はこちら

キャンディーズ~ラジオの世界 エグレと年増とドラム缶の美学~
キャンディーズの音楽~レコードデビュー未満~
キャンディーズの音楽~初期のキャンディーズ~
キャンディーズの音楽~中期のキャンディーズ録音編その①~
キャンディーズの音楽~中期のキャンディーズ録音編その②~
キャンディーズの1975年
キャンディーズの音楽~中期のキャンディーズ録音編 最終回~
キャンディーズのライブパフォーマンス~75年まで~
キャンディーズのライブパフォーマンス~大里マネージャのステージ美学とMMP~
キャンディーズのライブパフォーマンス~キャンディーズのスティーヴィワンダー~

~アイドル歌謡クラシックス二連発~

前回の記事でも書いたが、75年の年末には代表曲の一つ「ハートのエースが出てこない」が発売される

ha-to.jpg
キャンディーズのみならず、70年代歌謡曲を代表する超有名曲である。

四曲続いた千家=穂口コンビのシングルも「内気なあいつ」「その気にさせないで」がヒットしなかったせいか(楽曲はどちらも申し分ない。特に「その気にさせないで」はもう・・・)、作曲が初期のシングルを手掛けていた森田公一に戻り(「あなたに夢中」「そよ風のくちづけ」「危い土曜日」と初期の三枚を手掛けたが、どれも傑作で個人的にはキャンディーズの楽曲ベスト10に三曲とも入る屈指の名曲)、作詞は若手の竜真知子が担当(キャンディーズの作詞家陣として欠かせない人物であるが、後に狩人の「あずさ二号」を書いたりしてヒットメーカーとなる)。

穂口先生の楽曲は少し洋楽寄りのアプローチであったのに対し、森田先生はそれを踏まえてドメスティックな方向に引き戻した。
アレンジも初期の楽曲を手掛けていた竜崎孝路に戻っているが、穂口先生、松崎Pらにより本格派コーラスグループへと成長を遂げたキャンディーズをうけて、初期の傑作「危い土曜日」的な熱っぽいアレンジが施されている。
コーラスもユニゾン、2声和音、3声和音とキャンディーズコーラスの集大成となっている。

ライブの人気曲の一つで、ライブでは前半の洋楽カヴァー大会が終わった後、後半のオリジナル大会のオープニングを飾ることが多かった曲

この曲には、歌詞の一部が異なっているテイクが存在する。音源をよく聴くとAメロの歌詞「デートのチャンスは」の部分に不自然なエコーがかかっているが、どうも差し替えたらしい。もともとは「デートもキッスも」だった。
カードゲームを題材にした歌詞なので、駆け引き感を出す為には「デートのチャンスは」の方が確かにスリリング。二番のAメロで「小さなキッスを奪われそう」というフレーズが出てくるのでそれに対する布石としても適切だと思う。

「デートもキッスも」のテイクは、へんちくりんなリミックスヴァージョンの中でのみ公開されていた様だが、2008年のキャンディーズタイムカプセルに到って、ようやく通常ヴァージョンで聴けるようになった。

ハートのエースが出てこない アナザーリリックヴァージョン


こちらは解散直前に森田公一先生と共演した映像。バックはMMP



haruitiban.jpg
続いて76年3月に発表されたシングルが、春になると毎年必ずかかる国民的歌謡曲「春一番」である。


恐らく日本人ならば知らない人はいないであろう国民唱歌とも言える楽曲
最近は、湘南乃風の若旦那とかいう人がカヴァーしたらしいが、実はこの曲、今カラオケで歌えないらしい・・・

著作権を保有する穂口先生が今年の三月末日付けでJASRACを退会してこの曲を自己管理にした為である。
この問題は非常に大きく、著作権及び音楽業界に関する重要事項である為、今回は割愛します。

昨年の田中好子さん逝去に続き、今年はこの穂口さんの「春一番」問題で音楽業界に強烈な一石が投じられた。
来年はいよいよキャンディーズ「レコードデビュー40周年」という・・・。

この曲もロマンに満ちたエピソード付きの楽曲である。
もともとシングル曲ではなかったこの曲は、アルバム「年下の男の子」に収録されていた1曲に過ぎなかったが、ファンの間での人気が非常に高く、キャンディーズやスタッフもお気に入りの一曲だった為、シングル化に難色を示している渡辺晋社長(またか~)を説得する為に歌詞とアレンジを手直ししたものまで用意したと言われている。
実際シングル化に際してはホーンセクションを加えミックスをしなおし、歌詞はそのまま採用された。
となると、この「ナベシン対策テイク」が聴きたい様な気がするが、さすがに発表はしないようだ。

ファンとメンバー、スタッフが一丸となってシングル化に成功した、いわば「下克上シングル」である「春一番」はキャンディーズの代名詞となり、デビュー以来最高の売り上げを記録した。

しかし、この曲、渡辺晋社長が難色を示すのも無理は無い。「年下の男の子」の際に「これは歌謡曲じゃない」と怒られたばかりなのに、アルバムに入っている「春一番」のテイクはキャンディーズの録音の中でもドラム最凶ナンバー(キャンディーズの音楽~中期のキャンディーズ録音編その①参照)。
アルバムテイクでは、まるでキャンディーズより手前でドラムを叩いているかのごとく兎に角キャンディーズが完全にドラムに食われているので、その辺を抑え、ホーンセクションを加えている。
ついでにこの曲、キャンディーズの中ではかなり珍しい曲でコーラスパートが殆ど無い。一貫してユニゾンで歌われ、コーラスはサビの「は~るですねぇ」の部分のみ。


~キャンディーズ三部作第三弾、アルバム「春一番」~
soll-209.jpg
大ヒット曲「春一番」を引っさげて、三部作のラストを飾るアルバム「春一番」は、とにかく明快でハピネスな魅力が全開。キャンディーズのアルバムの中で最も華のある作品だ。

「年下の男の子」「その気にさせないで」というアウトキャスト組による作品がある意味アーシーで男臭い感じであったのに対し、ソウル色は抑えられ、A面にはこれでもかという位にシングル級の楽曲オンパレードで超女子的。

前時代的な歌謡曲テイストも殆ど無く、かといって当時のニューミュージック的でもない、ルーツオブJ-POPとでもいえる様な新鮮さに満ちている。

このアルバムが「華満開」な理由は作詞の竜真知子と森雪之丞にある事は間違いない。

キャンディーズと竜真知子先生の詞はとても相性がいい、特にランとの相性は抜群!

そして「キャンディーズの下僕」(笑)である新人、森雪之丞先生も、歌謡曲の作詞家先生とは違う洗練された歌詞でキャンディーズのエヴァーグリーンな魅力を引き出している。

そんなアルバム「春一番」は、ビートルズの「カンザスシティ」や「レヴォリューション」を意識したであろう、歪んだブギイントロで始まる軽快なロッキンシャッフルナンバー「恋はふわふわ」で幕をあける。
はじける様なユニゾンボーカルと女性ならではの歌詞が非常に新鮮で、恐らくこの辺の感覚が現代のアイドル向け楽曲のマナーになっていると思われる。
続く「オムレツをつくりましょう」では森雪之丞が得意の「料理ネタ」(笑)で「年下の男の子」路線の楽曲を盛り上げる。
唯一ソウルフレーバーを感じるミキのソロ曲であるA3「待ちぼうけ」は、Young-Holt Unlimitedの「Soulful Strut」的なイントロキメが印象的な曲であるが、シンセベースとチョッパーが効いたアレンジが興味深い。
シングル曲を除いても兎に角、言及したくなるような佳作揃いであるがA面のハイライトはライブでも人気の高い「恋のあやつり人形」だ。
ホーンとストリングスによる派手なイントロからいきなり水谷ギターであろうエクストリームなディストーションギターが違和感とともに強烈な印象を与えるロッキンルンバ。
イントロのみならずキメ部でも歪んだギターが聴かれ、バンドVSディストーションギターというスリリングなアレンジが堪能出来る。
構成も素晴らしく、ユニゾン、2声3声コーラス、各人ソロパートが網羅され、派手なAメロまでの流れをBメロでランがしっかり落として見せる。

恋のあやつり人形 キャンディーズ
http://www.youtube.com/watch?v=aZFi7ORpnEM


こちらの映像は解散前の芝郵便貯金ホールでのライブ。
かなり特殊な振り付けで終始パントマイム/ロボットダンスだ。さすがに歌いにくそうなんで、パントマイムはイントロだけにすべきだった様な気がしてならない。
ちなみに元ネタの一つはアメリカのソフトロックグループThe Associationの67年のヒット「ネヴァー・マイ・ラヴ」で、スローナンバーであるこの曲をスウェーデンのBLUE SWEDEという一発屋バンドがアップテンポにアレンジしたヴァージョンのもの。キャンディーズは「ネヴァー・マイ・ラヴ」をBLUE SWEDEヴァージョンでステージ披露している。

これは1976の蔵前国技館10000人カーニバル Vol.2でのもの。アソシエイションじゃなくてブルースウェードの方はもう一曲ライヴの定番曲で絡んで来るのでその辺の話はライブ記事の際に触れます。




問題はやはりB面だ。「ハートのエースが出てこない」で幕をあけ2曲目、唯一歌謡テイストが強めの井上忠夫ナンバー「弱点みせたら駄目よ」をはさんでの3曲目「朝のひとりごと」でいきなり雰囲気がかわる。
フランシスレイの「パリのめぐり逢い」ネタであろう、宮川泰作のラウンジナンバーが突然登場。
今回の挑戦はフレンチポップ。そして挑戦者はやはりミキ!!
ファーストアルバム以来の登場である宮川泰先生はソフトロックやラウンジ系が得意なイメージだ。

ここでのミキはハスキーなテイストを活かしたアンニュイ表現に挑戦している。
この楽曲、実は重要で、このコンセプトが後のシングル「哀愁のシンフォニー」に繋がって行くと思われる。
コーラスグループとしてはほぼ完成していたキャンディーズであったが、ソロシンガーとしての魅力や幅はまだまだ広がる余地があり、アンニュイ表現もその一つ。後の作品では各人がこぞってアンニュイ唱法に取り組むこととなる。
これまでもそうであったが、様々な音楽的挑戦でいつも中心にいるのはミキであり、ミキに追従する形でランとスーが新しいスタイルに挑戦していく。

「君が美しすぎて」での歌唱が素晴らしすぎて、以後の歌唱スタイルがどうにも鼻について仕方なかったミキのボーカルであるが、ここでのミキは妙な節もそこそこ取れ、洗練されてきている印象。

キャンディーズ Miki ・ 朝のひとりごと
http://www.youtube.com/watch?v=qTBQeJMWObs
作詞は竜真知子先生であるが、やはりランのイメージが強くて、この曲もランで聴いて見たかった様な・・・

上記曲での「おフランス」テイストはなんだったのか、B4ではいきなりA面に戻った様なボーディーな佳曲「恋の臨時ニュース」、軽快なディスコビートフォーク「PAPER PLANE LOVE」というランの魅力的なソロ曲が続く。

ラストを飾るのは「ラッキーチャンスを逃がさないで」。
再び三人の元気なユニゾンが聴ける。
ソロパートはミキのダブリングだ。
テレビ「プロポーズ大作戦」のテーマソングだったこの曲は、キャンディーズ解散後もテーマソングとして使用され、もっとも長くメディアに乗っていた楽曲であった。また編曲はMMPのリーダー、チャッピーこと渡辺茂樹氏が担当している。


~モダンアイドルグループのバイブル~

初期の制作陣、アウトキャスト組、新人作家が三つ巴となったこの「春一番」というアルバムには、もはや昭和歌謡的なテイストは感じられない。というよりも時代を超えた魅力があるといえる。その理由はやはり楽曲よりも歌詞にあるだろう。

ここで竜真知子や森雪之丞が作り出したキャラクターは、「おねえさん」でも「女性」でも「暑苦しい青春を掲げた若者」でもない。

兎に角「永遠の女子」なのだ。

やたらに若さを強調したがった60年代後半~70年代前半や、日本人が好む「侘・寂」とも、お姫様的ファンタジーの世界とも違う、「等身大の女子の世界」を描いた。

「女の愛嬌」というものは幾つになっても変わらない、要するに「女の可愛さ」というものはどの時代も変わらないという事だ。

この「春一番」というアルバムのイメージが現行のアイドルグループの源流であり脈々と受け継がれているのだ・・・

たぶん・・・



ということで、やっぱりやってしまった~。

一枚のアルバム書くのにこんなにつかってしまったので、次回も中期の話が続く感じ~

一体、いつになったら終わるのやら・・・

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キャンディーズの1975年

2012.12.02 Sun
おつです~

随分と空いてしまいましたが、まだまだ3分の1程度しか進んでいないので、早速いきます。

今回は音楽の話ではなくてバックグラウンドの話をしてみます~
なので、テキスト多めな感じ。
最近は、画像やら映像やらを貼りまくり随分と重たくなって来てるので、今回は控えようかと・・・

キャンディーズに相当興味ある人じゃないと読めない内容になってしまいそう~

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~キャンディーズにとってのヒット元年~


1975年はキャンディーズにとって極めて重要な年である。
初めてのヒット曲である「年下の男の子」(オリコン9位)が発表された年であり、ソウル歌謡史上屈指のキラーチューン「その気にさせないで」(オリコン17位)、そしてアイドル歌謡クラシックスとなっている重要曲「ハートのエースが出てこない」(オリコン11位)もこの年に発表された。

しかし、驚きなのはたいして売れていない事である。「ヒットした」といっても1位は勿論のこと5位にすら入れていないのだ。

歌謡史上に残る国民的ナンバーともいえる「年下の男の子」でも9位、「ハートのエースが出てこない」なぞは10位以内にも入れていない・・・。

現在は「ビッグワンガム商法」(AKB商法ともいわれる)や「自社買い制度」に侵食され、完全に機能しなくなっているオリコンチャートであるが、当時はレコード全盛期、オリコンチャートで上位に入る事が非常に難しい時代であったのがわかる。

そして「年下の男の子」をひっさげて「紅白歌合戦」に出場が決定。

出場決定の知らせを聞いた時の興奮は相当なものだったらしく、松崎Pをはじめ、そこらへんにいたファンらを引き連れて六本木に繰り出し、祝杯をあげたそうだ。

ファンを引き連れて・・・? 
このインディーズバンドみたいなノリのよさもキャンディーズの特徴の一つだ。

松崎澄夫プロデューサの言葉

「はじめて『紅白歌合戦』が決まった時、六本木のクラブでね、みんなで盛り上がったんですよ。最後に松崎がしゃべらなきゃ、って言われたんだけど、もう泣きそうになってたから。嬉しくてね。自分がバンドで出来なかったことを、この子たちにある程度託していたところってあるから。バックもちゃんとバンドでやっていたし――――。」(ドキュメンタリー オブ キャンディーズより)

自身がミュージシャン(アウトキャスト~アダムス)として決して満足な活動が出来た訳ではなかったであろうから、その喜びは人一倍であったことであろう。なんとも素敵な話である。


~ヒット曲以上に重要な交代劇~

作品の成果も極めて重要な年であるが、キャンディーズにとって更に重要な出来事があった年でもある。

マネージャの交代劇だ。

結成当初からキャンディーズを担当し、常に行動を共にし「キャンディーズ」というグループの基礎を作った敏腕マネージャ、諸岡義明氏がキャンディーズを離れた。

諸岡義明は「ザ・ピーナッツ」のマネージャを務めた人物で、諸岡氏によるチームは優秀なスタッフが揃っており「花の諸岡組」といわれるほどだったそうだ。
そんな「諸岡組」は駆け出しのハナタレ娘三人に業界の作法をはじめ、的確な指導を行い「キャンディーズ」のキャラクタを作りあげた。
ランのカリスマ性に気付き、的確なファン層を把握して、センターポジションをスーからランに替えたり、当初シングルB面の予定だった「年下の男の子」をA面にする事を推し進めたのも彼であった。

キャンディーズは諸岡マネージャに全幅の信頼を寄せていたようで、特にランはこの出来事があまりにもショックで、相当泣いたらしい。
しかし、キャンディーズはやっぱりついている!

続いてマネージャについたのは、キャンディーズのみならず、今や日本の芸能界の重要人物の一人、大里洋吉氏(アミューズを設立した人)であった。
諸岡マネージャが育てた「キャンディーズ」というキャラクタを大里マネージャは次の次元(というか超次元)へ導いた。

キャンディーズが「リアル少年ジャンプ」友情・努力・勝利のシンボルとして究極のアーティストと成りえたのもこの二人の存在が大きい。


~キャンディーズバンド化計画~

大里マネージャはライブパフォーマンスを非常に重視するタイプの人だったようだ。

ナベプロはジャズミュージシャンだった渡辺晋さんが作った会社なので、ナベプロの歌謡ショーとなるとジャズミュージシャンによるビッグバンドがついてジャズっぽいステージになることが多く、75年の前半まではキャンディーズも昔ながらのビッグバンドをバックにステージをやっていたが、大里マネージャはそこにGS世代のロックミュージシャンによるバンドをつけて「キャンディーズバンド化計画」を計った。
大里マネがバックバンドを打診したのは、かつて自身がマネージャを務めていたGSグループ「ザ・ワイルドワンズ」の鍵盤奏者であった「チャッピー」こと渡辺茂樹率いるMMP(ミュージック・メイツ・プレイヤーズ)だった。

MMPは76年以降は専属バンドとなり、ライブにおけるキャンディーズは、MMPも含めて「キャンディ-ズ」という大所帯バンドと化し、解散まで活動を共にして行く。
そんなMMPとの初共演が75年8/26日の「日劇ウエスタンカーニバル」だった。

MMPについてはキャンディーズのライブに関する記事で深く取り上げる予定なので今回はこれだけで


画像が一枚も無い~

参考:ドキュメンタリー オブ キャンディーズ

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世界で最も仰々しい?チャールズ・ステップニーの美学

2012.09.15 Sat
キャンディーズ研究の流れで、久しぶりにスティーヴィーワンダーなぞ聴いてみたりしてたのだが、さらにその流れでミニーリパートンを思い出した。
スティーヴィーは「ラヴィンユー」で知られる、74年のアルバム「パーフェクトエンジェル」をプロデュースしている。

ミニーといえば、僕的にはロータリーコネクションという、彼女が属していたグループがどうしても外せない。
レコードコレクターやDJ、レアグルーヴ好きの人間以外は中々とっつきにくいであろう、めんどくさいグループではあるが・・・。

書こうと思っていてずっと書いていなかったこのグループのプロデューサー、チャールズステップ二ーという人について書いてみます。

ということで、キャンディーズ研究は一回お休みですが、意外にもキャンディーズとの微妙な接点があった?


~シカゴの重要レーベル、CADETのプロデューサーとして~

シカゴの有名レコード会社といえば、何といっても、ブルースやロックンロールファンにはお馴染みのチェスレコード。
Chessrecordslogo.gif
マディウォータズやハウリンウルフといったシカゴブルースの巨人からチャックベリー、ボディドリーといったロックンロールの巨人まで錚々たる面子が録音を残している、まさに「神レコード会社」

チェスレコードの物語は、08年にビヨンセ製作総指揮のもと「キャデラックレコード」として映画化もされた

ビヨンセ自身も「美しすぎるエタジェイムス」役で登場し堂々とした歌いっぷりを披露しているが、如何せん脚本が・・・。良し悪しはともかく、現代の歌姫がプロデュースをかって出てまで「ブルース」を題材に取り上げているのが何とも嬉しい。ちなみにチャールズ・ステップニーは一切出てきません・・・。

チェスはArgoというジャズ系のレーベルを持っていたが、それが発展する形で「Cadet」というソウルジャズ系レーベルが設立された。
Cadet.jpeg
65年に設立されたCadetはネタの宝庫で、DJやレアグルーヴファンにとっては最重要レーベルの一つといえる

そこでアレンジャー・プロデューサとして手腕を振るっていたのがチャールズステップ二ーである。
cmimg_53459.jpg
彼のサウンドメイキングの特徴は、ド派手なオーケストレーション(特にストリングスアレンジとコーラスアレンジ)と当時の黒人ジャズミュージシャンにみられた様なルーツ回帰的なアフログルーヴ、そしてサイケデリックテイストが渾然となった、実験的なサウンドである。
ステップニーは、リチャード・エヴァンスというもう一人の気鋭アレンジャー・プロデューサと共に、ラムゼイルイスやデルズ、マリーナショウ、テリーキャリアー等の重要作を次々と手掛けて行く。

~Cadetのステップニー&エバンス関連曲~

どれも驚異的にヤバイので興味ある方は是非、耳を・・・

・Ramsey Lewis
ソウルジャズピアニストとして人気の高いラムゼイルイスであるがCadetにはステップニー組として自己名義、プレイヤー名義、様々な形で録音を残している

Maiden Voyage 1968
http://www.youtube.com/watch?v=yka6o3gLqZY
Eternal Journey 1968
http://www.youtube.com/watch?v=sVr-VdPyGO4&feature=relmfu
Cadetのセッションプレイヤーで後にEW&Fのドラマーとなるモーリスホワイトが参加、彼も「ステップニー組」であった。ミニーリパートンも超音波(笑)で参加。

Back In The USSR 1968
http://www.youtube.com/watch?v=kq7mW5rPoag
Everybody's talkin 1969
http://www.youtube.com/watch?v=cNv4TLtANIc&feature=relmfu

・The Dells
Love Can Make It Easier
http://www.youtube.com/watch?v=YN2amGEECgc
It's All Up To You
http://www.youtube.com/watch?v=Xc3TOnWuSuk

・Marlena Shaw
Woman Of The Ghetto
http://www.youtube.com/watch?v=4QKZPacCkyE
California Soul
http://www.youtube.com/watch?v=2MMflNf-ocg

・TERRY CALLIER
ORDINARY JOE
http://www.youtube.com/watch?v=f0YOb5IC1js&feature=related
Just As Long As We're In Love
http://www.youtube.com/watch?v=WxIYMlF2gUs

・Phil Upchurch
Crosstown Traffic
http://www.youtube.com/watch?v=QydmTFNZlV8

・Dorothy Ashby
Myself When Young
http://www.youtube.com/watch?v=hl9g10DSQGs&feature=related

・The Soulful Strings
Comin' Home Baby
http://www.youtube.com/watch?v=q7vJPfUviuo

・Ahmad Jamal
Wild is the wind
http://www.youtube.com/watch?v=jMRH0hwdimc


ステップニー、エバンス、ステップニー&エバンスの制作をざっとあげてみましたが、きりが無いのでこの辺で~
「やり過ぎ」を貫き通した孤高のサウンドが最高にカッコいい。

~ブルース界最大の問題作を手掛ける~

68年、保守的なブルース作品の制作に限界を感じていたチェス家の御曹司、2代目社長のマーシャルチェスは、売り上げが伸び悩んでいたブルース界の巨人、二人を使って当時隆盛だったサイケサウンドを取り入れた斬新なブルースアルバムの制作を行った。
二人の巨人とはマディウォーターズとハウリンウルフである。
6a00d8341c630a53ef0105366867a4970c-800wi.jpghowlin-wolf-fifties-460-100-460-70[1]
犬猿の仲であったマディとウルフ

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マディ最大の問題作?「エレクトリックマッド」

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そして、ウルフ最大の問題作?「ハウリンウルフアルバム」

ジミヘンにあやかろうと、ワウやらファズやらエコーやら、荒っぽいステレオサウンドに乗っかってシカゴブルースクラシックスがサイケナンバーと化す。
両作品とも収録曲はウィリー・ディクソンナンバーを中心とした代表曲の再録になっているが、オリジナルの原型を全く留める事無く、気持ち悪いまでに解体されている。

例えば、マディの場合

I Just Want To Make Love To You Muddy Waters
これが
http://www.youtube.com/watch?v=RnlvHP1AXPo
こんなに
http://www.youtube.com/watch?v=dvNjZGZ_UjI

ウルフの場合

Smokestack Lightning Howlin' Wolf
これが
http://www.youtube.com/watch?v=VKg0YXigbSs&feature=related
こんなに
http://www.youtube.com/watch?v=LxmFuVhrQoM

90年代のファットポッサムレコードかと思わせる、この違和感と意表を突くサウンドの奇妙な作品は「Cadet Concept」というサイケレーベルからのリリースとなった。
両作品ともバックを務めるミュージシャンはフィル・アップチャーチやモーリス・ジェニングス等キャデットのステップニー組。加えて、後に電化マイルスデイヴィスグループの一員となる、ピート・コージーがモリモリギターを弾いている。
往年のブルースファンには「無かった事」にされ、マディやウルフ本人達も嫌いなこの作品は、白人ファンを中心に結構売れたようだ。

これを、所謂「ブルース」としてマディやウルフの気持ちを考えて聴いてしまうと、非常に心苦しくなってしまうのだが、ひとつの作品としてみた場合、意見は随分変わってくる。
リズムやリフのアプローチ、サウンドコラージュの感覚は当時のサイケテイストを踏まえ、更に90年代後半に近い空気感がある。30年も先を行ってしまうフューチャーサウンドの実験に、何もブルース界の重鎮を引きずり込む必要は無かった様な気がするが、「珍盤・迷盤」という枠を超えた傑作であると思う。


~ロータリーコネクションとミニーリパートン~

チャールズステップニーのCadetにおける仕事として最もインパクトがあるのがやはりミニーリパートンを擁する、プログレッシブサイケコーラスグループ「ロータリーコネクション」の一連の作品だ。
シカゴの熱っぽいソウルジャズグルーヴに乗っかる、ポップミュージックとして聴くにはあまりにも仰々しい壮大なアレンジ、そしてそれを包み込む何ともいえないサイケな浮遊感は、90年代後半イギリスのブレイクビーツシーンの筆頭であった4Heroに多大な影響を与え、「マディやウルフの問題作」以上に洗練された「30年先を行くフューチャーサウンド」であった。
rc4.jpg
サイケ臭プンプンのロータリーコネクションの面々

ロータリーコネクションといえば67年デビュー作に収録されているこの曲がレアグルーヴ世代により注目された代表曲。
Rotary Connection "Memory Band" (1967)
http://www.youtube.com/watch?v=UEVXHGXWNfo
久石譲の名曲「ナウシカ・レクイエム」にも影響を与えた(かどうかは知らないが)、子供ボーカリーズの最高峰。ミニーの超音波は聴けるけど他のメンバーは・・・

そして、実質ステップニーのプロジェクトとして「ザ・ニュー・ロータリー・コネクション」名義で出されたラストアルバムの曲で97年にNuyorican soulがカバーして話題となった傑作「I am the Black Gold of the Sun」

Rotary Connection "I Am The Black Gold Of The Sun" (1971)
http://www.youtube.com/watch?v=UzqaY4Nz0yA&feature=related
メランコリックなギターに導かれるアヴァンギャルドなピアノリフ、裏切り続ける神秘的なメロディと展開、そしてモダンなベースラインとリズムアプローチ。どれをとっても素晴らしい。フィル・アップチャーチが弾く歪んだギターが若干、古臭い印象を与えるがそれ以外は非の打ち所が無い完璧な曲だ。

Nuyorican Soul "I Am The Black Gold Of The Sun" (1997)
http://www.youtube.com/watch?v=aaSWjGIWEmM
僕が最初に聴いたヴァージョンはこっちであったが、やはりオリジナルの方が圧倒的。

ロータリー・コネクションはオリジナル曲以外にも多くのスタンダードナンバーを取り上げているのだが、これがまた例によって原型を留めないまでに解体されステップニーマナーで再構築される。

Rotary Connection "Respect" (1969)
http://www.youtube.com/watch?v=f5Eiyv9QD7M&feature=related
サザンソウルスタンダードの「リスペクト」がこんなに・・・。全く別の曲です。
Rotary Connection Sunshine Of Your Love
http://www.youtube.com/watch?v=NNZhb85SHvo
様々なユニークなカヴァーが存在するクリームの「サンシャイン~」もかなり危ない事に

殆ど00年前後の最先端のブレイクビーツサウンドと変わらないのが驚きだ。

ミニーリパートンがロータリーコネクション在籍中に録音したデビュー作「COME TO MY GARDEN」もステップニープロデュースで、モーリスホワイト、ラムゼイルイス、フィルアップチャーチ等のステップニー組がバックを固めて制作されているが、ロータリーコネクションではイマイチ活かしきれてなかったミニーのボーカルの全貌が明らかになった。サウンドのテイストはロータリーコネクションと全く同じで、この上なく仰々しく、果てしなく完璧な仕上がりである。

minnie_ripperton_-_come_to_my_garden.jpg

Minnie Riperton Completeness
http://www.youtube.com/watch?v=mY9Os1aNyPs
Minnie Riperton Close Your Eyes and Remeber
http://www.youtube.com/watch?v=sNB2m7REwWs
Minnie Riperton - Expecting
http://www.youtube.com/watch?v=hoeKsFgCh00
Minnie Riperton - Expecting
http://www.youtube.com/watch?v=hoeKsFgCh00
Minnie Riperton - Expecting
http://www.youtube.com/watch?v=7GMpoxHEG1I
どの曲も兎に角素晴らしく、鳥肌モノで僕の創作意欲をビンビンに掻き立てる。


~ステップニーサウンドを甦らせた4Hero~

創作意欲をビンビンに掻き立てられたアーティストの中には90年代よりドラムンベースシーンを牽引した「ブレイクビーツの雄」、4Heroがいた。
派手なストリングスとコーラスアレンジは完全にステップニーマナーであり、巧みなドラムワークと見事なグルーヴを演出し、孤高のサウンドを生み出していた。
05241455_4bfa14d17d9ec.jpg
98年の「Two Pages」は90年代を代表する傑作アルバムだ

4Hero - Golden Age of Life
http://www.youtube.com/watch?v=isKtcbV9DJk
00年頃は毎日の様に4Heroを聴いて、アレンジを研究していたっけ。

01年にはミニーリパートンの「COME TO MY GARDEN」からLes Fleurをカヴァー

MINNIE RIPERTON-Les Fleurs
http://www.youtube.com/watch?v=g1kDd6yBQZ4
4hero "Les Fleur" (2001)
http://www.youtube.com/watch?v=GgyEEf-0tfo&feature=related
ほぼ忠実にカヴァーしている所からも如何にステップニーをリスペクトしているかがわかる。

98年のMontreux Jazz Festival での4heroのライブ映像があったのでのせてみる





~EW&Fとステップニー~

EW&FはCadetのセッションプレイヤーであったモーリスホワイトのグループで、70年代後半のディスコブームに乗っかって多いに流行ったグループであるが、ディスコ化以前のアースには盟友であるチャールズ・ステップニーも大きくかかわっていた。
モーリスのグループだったので、メインプロデューサというよりも共同制作者的な立場でステップニーワールド全開という訳にはいかず。個人的にはさほど興味が無いのだが、ステップニーが絡んでいた時期の楽曲で「Can't Hide Love」という傑作がある。

Earth, Wind and Fire - Can't Hide Love
http://www.youtube.com/watch?v=wr0ekZlcM8E
ディアンジェロもライブ盤でカヴァーしていた、75年発表のこの曲にはステップニー臭が感じられる。特に後半、唐突にはじまり1分半も続く不気味なロングトーンコーラスは圧巻のかっこよさだ。

残念な事にステップニーはEW&Fと作業をすすめていた翌76年にこの世を去ってしまう。


~おまけ キャンディーズとステップニー~

キャンディーズが黒人音楽に影響を受けていた話は度々しているが、後期、77年頃にはEW&Fの曲がライブの重要なレパートリーになっていった。ステップニー死後のヒット曲である「Fantasy」や「Jupiter」といった楽曲であったが、78年、後楽園球場の解散コンサートでの「Fantasy」「Jupiter」におけるキャンディーズは素晴らしく、渾身の名パフォーマンスだった。

さらに、後期キャンディーズにコーラスワークというより各人のボーカルスタイルに影響を与えているであろうと思われる、The Emotions、Deniece Williamsといった甘茶系ソウルシンガーのプロデュースをモーリスホワイトと共同で手掛けていたりもする。

The Emotions - Flowers
http://www.youtube.com/watch?v=WbcbOFM4tFQ
Deniece Williams - Free
http://www.youtube.com/watch?v=imTDWIZwEDU&feature=related


ということで、今回はリンクてんこ盛りにしてみましたが、興味のある方は是非、ぶっ飛びのステップニーワールドを堪能してみて下さい~

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キャンディーズの音楽~中期のキャンディーズ録音編その②~

2012.09.02 Sun
おつ~、夕方から書き始めてやっと終わったよ。
もう、傷だらけです・・・。


ということで、キャンディーズ~

タゲマアイコン他のキャンディーズ記事はこちら

キャンディーズ~ラジオの世界 エグレと年増とドラム缶の美学~
キャンディーズの音楽~レコードデビュー未満~
キャンディーズの音楽~初期のキャンディーズ~
キャンディーズの音楽~中期のキャンディーズ録音編その①~
キャンディーズの1975年
キャンディーズの音楽~中期のキャンディーズ録音編その③~
キャンディーズの音楽~中期のキャンディーズ録音編 最終回~
キャンディーズのライブパフォーマンス~75年まで~
キャンディーズのライブパフォーマンス~大里マネージャのステージ美学とMMP~
キャンディーズのライブパフォーマンス~キャンディーズのスティーヴィワンダー~

「年下の男の子」のヒットにより、「同じ路線でもう一曲作れ」指令がでたのか、次のシングル「内気なあいつ」は歌詞もアレンジもあからさまな楽曲であったが、そううまくはいかずオリコンでは18位止まり。
作詞作曲は引き続き、千家和也=穂口雄右コンビが担当し、キャンディーズの楽曲に欠かせないコンビとなった。
ヒットは逃したものの、65年にマキシンブラウンが歌い、ロッドスチュワートのフェイセスもカヴァーしたC.キング&G.ゴフィン作「Oh No, Not My Baby」を思わせるAメロから始まる軽快なロックナンバーで中々の佳曲。

内気なあいつ キャンディーズ
http://www.youtube.com/watch?v=UYg02GpIZxU
Maxine Brown OH NO, NOT MY BABY
http://www.youtube.com/watch?v=o7iuI9Dssig
Rod Stewart OH! NO NOT MY BABY
http://www.youtube.com/watch?v=1pRC43fxHpk
やっぱりこの曲は「ソウルフルストラット」みたいなアレサのヴァージョンがかっこいい~
Aretha Franklin Oh No Not My Baby
http://www.youtube.com/watch?v=rRPw6VYSxXQ

おっと話がそれてきてしまったのでキャンディーズに戻る


その気にさせないで

とりあえず、同じ路線のシングル曲をさくっと作った、千家=穂口コンビは次の7枚目となるシングルでいよいよ爆発する。
「その気にさせないで」という刺激的なタイトルが付けられた曲は、当初のきわどい歌詞がまたしても渡辺晋からNGが出され書き換えられたという意欲作。
SOLB310.jpg

ブラックミュージック全開のスティーヴィー歌謡でライブでは欠かせないキャンディーズの代表曲である。
ここで聴けるソウルフルなコーラスと濃厚なユニゾンには、キャンディーズの進化が「グルーヴ」としてはっきりあらわれている。ランのリードも腰が据わってきて、ようやく自信がついてきた様に感じる。
ちなみにこの曲のオリジナルカラオケバージョンには2コーラス目にうっすらスーのラフ歌が消し忘れか意図的かわからないが入っている。

その気にさせないで キャンディーズ
http://www.youtube.com/watch?v=7mqp64q2ahA
リズムの立ったタイトなバッキングにユニゾン主体のメロディがグルーヴを喚起する。
この曲こそ、ポンタ&岡沢コンビのリズム隊で聴きたかった。スタジオ録音では何故かパーカッションが入っていないのが残念だ。

折角だから映像も

キャンディーズの歌唱こそもうちょっとだが、映像としてはカッコいい。後ろで指揮をとるスマイリー小原にも注目。
ちなみにライブバージョンは格別のかっこよさ。その音はライブの記事で紹介する。


~キャンディーズ三部作第二弾、アルバム「その気にさせないで」~

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6月の大磯海岸で撮られたという「びしょ濡れジャケット」は黒のスリーブも相まってクールな印象。
裏ジャケの「闇波」もかっこいい。


アウトキャスト人脈と「がっぷり四つ」で作り上げた「その気にさせないで」は、スタジオ録音作品としてはキャンディーズの最高傑作と言えるであろう。
「年下の男の子」のヒットで認められたのか穂口雄右の曲が12曲中10曲を占め、ミキが初めて作詞にも挑戦した。
前時代的な青春歌謡路線を払拭、ソフィスティケイトされた「アイドル歌謡」らしからぬ楽曲を含め、ソウル、ロックンロール、フォーク、ボッサ等バラエティに富んだコーラスワークが堪能できる充実した楽曲が並ぶ。
キャンディーズのハーモニーの成長は著しく、ユニゾンの強化により意識的に声を近づけることでコーラスの厚みも増している。
前作から試みられていたソウルマナーなコーラスワークが更に精度を上げて、中期の充実ぶりと、ある意味「到達」を感じる内容となっている。

■到達を感じさせるディスコ歌謡

前回書いたが世界中でディスコ旋風が吹き荒れた時期なので、コーラスのみならず楽曲アレンジにも大きな影響が見られる。七十年代中期~後期は日本人にとってソウルミュージックが最も身近だった時代。
年頃の女子であるキャンディーズの面々もソウルミュージックが好きで、特にミキは熱心なソウルファンであった事もブラックミュージックに向かった一つの要因といえる。
ソウルフルなコーラスワークを会得する事により、スタッフ、そしてキャンディーズ自身が「コーラスグループ」として目指すスタイルがはっきりと見えた様な気がする。

スリーディグリーズ

美しく力強いユニゾンと、よりグルーヴィなコーラスを身に付ける為のお手本となったのは、フィラデルフィアのスリーディグリーズ。
The+Three+Degrees.png
ギャンブル&ハフ、トムベルらが仕掛けたフィラデルフィアのソウル、所謂「フィリーソウル」は七十年代中期に吹き荒れたディスコムーブメントの中で脚光を浴びていた。
スリーディグリーズはMFSB(フィリーソウルのスタジオミュージシャン)の代表曲「ソウルトレインのテーマ」でコーラスをとっていることでも有名で、彼女らの影響がキャンディーズのコーラスワークにもたらしたものは大きい。

MFSB feat ザ・スリーディグリーズ ソウルトレインのテーマ
http://www.youtube.com/watch?v=ligIq6o0rUU&feature=fvwrel

70年代モータウンやカーティスメイフィールド的なニューソウルをうけて、もう少しあく抜きをした感じのポジティヴなサウンドに世界中が夢中になっていた。

シングル曲である「その気にさせないで」をはじめ、ランがリードをとる「あなたの悲しみ」とミキがリードをとる「帰れない夜」という穂口流フィリー歌謡ナンバーではフィリー&ニューソウルフレーバーたっぷりのバッキングとスッキャッタブルなコーラスアレンジが冴え渡る。
三人のコーラスは、ハイトーンの完成度が素晴らしく、パーカッシブなスキャットコーラスもロングトーンもグルーヴ感満点だ。
ミキが歌う「帰れない夜」では前作のスティーヴィーに続き、今回はガチでスリーディグリーズをかましている。

Three Degrees - Dirty Ol' Man (1974)
http://www.youtube.com/watch?v=Jq-JpEIKdl8&feature=related

帰れない夜 キャンディーズ
http://www.youtube.com/watch?v=gYKA4Q5klZs
アレンジも「その気にさせないで」に匹敵する素晴らしさ。緊張感溢れるストリングスに器楽的なコーラス、そして水谷公生のWAH WAH ワトソンやカーティスにも通じるミュートカッティングやグリッサンドを効果的に使ったギタープレイも聴きもの。気合十分なアレンジはミキの歌が抜けてから2分もエンディングをひっぱりにひっぱり、計6分にも及ぶ長尺に・・・。
この時点では最長のナンバーとなった(歌が入る前に「ふっ」という声らしきものが入っているが誰?)
三人もこの曲がお気に入りだったらしい。

しかし残念なのは、ミキのボーカルがちょっと冴えない・・・(あくまで個人的な感想だが)。この時期のミキの歌唱には妙な節がついてしまっていて、グルーヴが感じられない。

■難易度の高いソフィスティケイトされた楽曲

このアルバムには、彼女達が今までに歌った事の無い様な「洗練された楽曲」も含まれている。
A②に早速、登場する「片思いの午後」とB②の「秋のスケッチ」の事であるが、どちらも素晴らしい楽曲で、キャンディーズを代表する名曲に数えられる。


「長い手紙書いた後で そっとそれを燃やし 見つめています・・・」と入る、竜真知子のロマンチックな歌詞が素晴らしいこの曲はランのリードボーカルの魅力が存分に発揮されている。
ランのリードには幾つか特徴があるのだが、最も魅力的なのがこの曲で聴かれる様なレガートを活かしたファルセットである。更にスローな曲ではランの独特なレイドバックしたタイム感が活きてくる。
コーラスもAメロではミキとスーが難しい下のラインを淡々とフォロー、サビではハモりとユニゾンが交互に入る絶妙なアレンジとなっている。A&M調のすっきりとした楽曲アレンジも印象的。
ライブではホーン隊が入り、もっとソウルフルなアレンジになり、個人的にはそちらのアレンジの方が好みではあるが・・・。


日本人はブラジル音楽が昔から好きで相性も良く、60~70年代には良質なボッサ歌謡が量産され、数々の名曲が残されているが、穂口先生がキャンディーズに書いたボッサ曲がこの「秋のスケッチ」。
75年ということで、サウンド的にはもろブラジルというよりはクロスオーバー(フュージョン)サウンドであり、やはりA&M的な香りのするAORボッサである。
リードをとるのはAメロがミキで掛け合いを挟んでランに入れ替わるパターン。ミキのやはりちょっと垢抜けないAメロに対して、レガートファルセットを活かしたランのリードが素晴らしい。「片思いの午後」と並び、ランのファルセットが存分に味わえる名曲だ。
コーラスも冒頭の「サバダバスキャット」や低音での音価の短い「フッ」という合いの手コーラス等、多彩で難易度が高い。ランの色っぽい低音とオクターブ上のロングトーンに応える、掛け合い部ではスーのハイトーンも素晴らしい。

難しい曲であるがライブでも度々、披露される曲で、後々はミキが一貫してリードをとる様になる。


■刺激的なロックンロールコーラス

バラエティに富んだ楽曲が並ぶ中、「どれがいいかしら」「二人のラブトレイン」という二曲のロックンロールにも挑戦。

どれがいいかしら キャンディーズ
http://www.youtube.com/watch?v=1kjcH63CRvs&feature=related
典型的でシンプルなかっこいいロックンロールナンバー。返しの部分のリズムがかっこいいロックンロールピアノは穂口さん?
キャンディーズは息のあったユニゾンと難しい三声コーラスを披露、「まだ、決まらない」というキメフレーズの部分のハモりは刺激的だ。
「男選び」の歌であるが「どれがいいかしら」と男を「どれ」扱いなタイトルも面白い。

ライブだとこんな感じ

解散二ヶ月前の78年のライブ映像。
「まだ、決まらない」の部分の高音部はさすがに封印している。

二人のラブトレイン キャンディーズ
http://www.youtube.com/watch?v=uYdlu4htLMg
こちらはミキが初めて作詞に挑戦した曲。名義は藤 美樹となっていて竜真知子が補作詞をしている模様。
松崎Pのアイディアか新しくマネージャーとなった大里洋吉のアイディアかはわからないが、制作にキャンディーズのメンバーが起用された最初の楽曲である。
作曲は得意だが、実は作詞はあまり得意ではないというミキであるが、やはり音楽的リーダーとしての信用があった為であろう、制作という本来、アイドル歌手が携わる領域ではないところに最初に抜擢されたのはミキであった。
この曲ではキャンディーズの楽曲では殆どソロをとっていない水谷さんのギターソロが聴ける。


その他、「ところで、お元気ですか?私は相変わらずよ」という千家さんによるサビの歌詞が最高の、スーがリードをとる「お元気ですか」という、元ワイルドワンズの加瀬邦彦によるナンバーや、三人が酔いどれボーカルを聴かせる異色なフォークナンバー「恋の作戦」も興味深い楽曲。



~レコーディングにおけるキーパーソンその②~

水谷公生
キャンディーズの音楽~レコードデビュー未満~という記事を書いた時に紹介させてもらったが、キャンディーズのプロデューサである松崎澄夫、メインコンポーザーである穂口雄右が在籍した伝説のGSバンド「アウトキャスト」。
そのバンドのリーダーだったのがギタリスト水谷公生である。

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アウトキャスト
前列右が水谷公生(当時、水谷淳)、前列左が松崎澄夫(当時、轟健二)、後列右が穂口雄右

アウトキャスト解散後はアダムスというこれまたカルトなGSバンドに参加し、そこにはキャンディーズの穂口曲のベーシスト、武部秀明(当時、千原秀明)がいた。

大仰なオーケストラを使ったぶっ飛びの贅沢GSは、発足したばかりのCBSソニーレコードの第一弾。
CBSソニーはキャンディーズのレコード会社である。
ナベプロはアダムスをタイガースに続くアイドルグループに仕立てようとしたみたいだが・・・
でも、山下達郎はこの曲が好きみたいである。
アウトキャストからは水谷と松崎(轟)が参加。

キャンディーズにおける穂口作品の殆どの作品でギターを担当している(恐らく他の作者の楽曲でも多く弾いている)のが水谷公生さん。
キャンディーズに限らず、70年代はロック、フォーク、歌謡曲を問わず数限りない録音に携わっていた名プレーヤーである。
この人の足跡をたどると、もう関連作品が多すぎて大変なので、キャンディーズに関してとあまり知られていないであろう作品に関して書いてみます。

水谷ギターの特徴は、「春一番」のイントロで聴ける様な歪んだギターによる独特のフレージングであろう。
キャンデーズの録音では多くの場合、ストイックなカッティングによるバッキングとオブリガード(結構モリモリ弾く)の二つのパートで録音されているが、かなり個性の強いフレージングが多い。
一発で彼とわかるアタックの強い歪んだオブリガードは、奇妙なアクセントや、時に不協和音すれすれのスリリングで凶暴なフレーズもいとわない独特なものだ。
作曲/編曲も多く手がける人であるが、キャンディーズには「めぐり逢えて」という非常に美しい曲を一曲提供したのみ。

~変態ギタリスト、水谷公生の71年~

特にセッションギタリストとしてジャズロックに精力的に参加していた71年は凄まじい作品が多い。


ピープル ブッダミーツロック

お経とダルいインプロビゼーションが延々と続く斬新な作品を残したピープルというグループのメンバーはなんと、穂口雄右(オルガン/ピアノ)、水谷公生(ギター/スライド・ギター/アコースティック・ギター/シタール)、武部秀明(ベース)、田中清司(ドラム)、ラリー寿永(パーカッション)。そうキャンディーズの数々の曲を録音したメンバーその人達です。
当時はプログレやアートロックなんて呼ばれたんでしょう。僕は正直苦手な感じですが、サマー・オブ・ラブ好きのサイケファンやポストロック好きな人達には歓迎されるかも?

Kimio Mizutani - Tell Me What You Saw
http://www.youtube.com/watch?v=s8EIdQOT0bE
唯一のソロアルバムの曲。キングクリムゾンのロバートフィリップみたいなフリーキーなプレイが炸裂

Love Live Life + One - Love Will Make A Better You - Shadows of your mind
http://www.youtube.com/watch?v=ahxuumD0lDI&feature=related
これまたヤバイ、エレクトリックマイルスならぬエレクトリックコルトレーンなLOVE LIVE LIFEというグループ
市原 宏祐、横田年昭、寺川正興といったジャズシーンの面々と柳田ヒロ、チト河内といったロックシーンの面子に加え、ボーカルはなんと既に歌謡曲でヒット曲があったシンガー布施明が務める。
水谷さんはジョンマクラフリンと化してます。

佐藤允彦&サウンド・ブレイカーズ / 恍惚の昭和元禄
http://www.youtube.com/watch?v=ei8URt9JLhQ
これまた危険度の高い、トップジャズピアニスト佐藤允彦のエレクトリックフリージャズ作品。オリジナルは10万超えらしい。

蘭妖子+下田逸郎 / 遺言歌 - 念仏子守唄
http://www.youtube.com/watch?v=ei8URt9JLhQ
東京キッドブラザーズの作曲家をやっていた下田逸郎のアルバム。
いかにもアングラ演劇といった体の楽曲で相変わらずのフリーキーっぷりを発揮している。

Hiro Yanagida - The Murder in the Midnight
http://www.youtube.com/watch?v=ApzjCkmmrik&feature=related
上記であげた殆どの作品で一緒に参加している、柳田ヒロのハードなプログレアルバム「7才の老人天国」にも参加。
もう、さすがにお腹いっぱいだ~

71年はこんなことばっかやっていた水谷さんですが、作曲・編曲家としては歌謡曲然とした曲も書けて、美しいアレンジが得意な印象です。
ちなみにアコギも上手い~。

~21世紀の水谷公生~

盟友の柳田ヒロ、浜田省吾なんかと一緒にこんなことやってました。

いきなりミクスチャーですか。同世代のGSのおっさん達とのこの差はなんなんだ~

付き合いの長いハマショーさんとは自宅のスタジオを拠点とするプロジェクト「Fairlife」というのを04年から始めているらしい。
ゲストにはポルノグラフィティのボーカルの人を筆頭にプリプリの奥居香とか奥田民生やゴスペラーズ等のソニー系の大物を招いて制作を中心に進めている模様。
ちなみにプロジェクトには水谷さんのかみさんも参加。カミさんは小川糸という女流作家で、なんと僕と同い年(73年生まれ)。

最近は首を痛めてしまったらしく、ギターを弾くのが困難になってきているという。
多くのGS世代のミュージシャンが他界されて行く中、ジュリーの様に精力的に活動をしてる方もいるが、ここまで音楽制作に前向きな人は居ないと思う。

ガレージパンクからジャズロック、歌謡曲・・・

様々な顔を持つ水谷公生さん。

どうかこれからも進化し続けて欲しい。



なんだか半分くらいは水谷さんの記事になってしまった~

それにしても中々、進まないな~。まだ中期の真ん中だよ・・・。

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Category:グルーヴィ音楽譚! | Comment(0) | Trackback(0) | top↑ |

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